カヌーもいいが、やはり本格派スポーティー野郎として船舶免許は必携である。
家族が呆れようが、周囲が引こうがいいのである。
シーマンとは本来孤独なものなのだ。海の男なのだ。これでいいのだ。バカボンのパパなのだ。
というわけで、
全く未知のフィールドに挑むのは心が躍る。まさに”出港”と言えましょう。
そもそも2級小型船舶免許とは、海岸から5海里(1海里は1852m、5海里=9.26km)以内の水域で24m未満、20トン未満の船舶を操縦できる免許で、”海の普通免許”と呼ばれている。
船釣りやクルージングなどほとんどのマリンレジャーはこの免許があればオッケーである。
今までクルージングといえば、鼻持ちならない成金二世のクソガキなんかがやるチャラチャラしたブルジョア的お遊びかと思っていたのだが、実は全国のマリーナにレンタルボートがあり、レンタカー並みの値段で借りられる事をネットで知った。
なーんだ、意外と敷居低いんじゃん、プロレタリアートにも手が届きそうじゃん、けっこう庶民的なんじゃん・・・、
ま、やってみてもいいかもね・・、っていうか、実はすごくやりたかったんだよ。
というわけで、
温めていた2級船舶取得計画を夏期休暇を利用して行動に移したのであった。
本当はこっそり取得して、全国に数百万人いる愛人たちに「荒木さんって船も操縦できちゃうの!? すごーい! キャイーン!」と言わせてやろうかと思ったのだが、結局ブログでバラしてしまうところが私のセレブになれない真性庶民なところである。
さて、
今日は学科の講習であったが、全国にチェーン展開しているライセンススクールの割りには教室は地味。石狩にあるこじんまりとした家族的な教室であった。
受講生は私も含めて5人。そのうち3人は仕事で受けに来ている消防関係の方で民間人は2人であった。
あまりの地味さと自分が場違いなのに一瞬ひるんだが、構うことはない。ここまで来たのだから未知のフィールドを思う存分楽しもう。
実のところ自動車教習に比べて実技も学科も時間が短いので、まあ通いさえすれば取れるのだろう、と甘く考えていた部分が無きにしも有らずだったのだが、今日は朝の9時から夕方6時まで、昼休みの1時間を除いてぎっしり学科講習であった。
科目は操縦者の心得から、運行法規、運行方法、気象、海図、機関にも及ぶ。
普段使わない脳をフル回転させたので夕方頃には少し具合が悪くなるほど疲れた。
しかしながら、いわゆる知的好奇心というやつは目一杯くすぐられた。
運行方法の講義を聞きながら、司馬遼太郎の「菜の花の沖」で高田屋嘉平が和船を操るシーンや、吉村昭の漂流物にあるジョン・万次郎の乗った船が難破を回避しようとする描写などがしきりと思い出された。やはり非常によく書かれた小説たちだったことがあらためて分かった。
ちなみに国家試験には例えばこんな問題が出るらしい。
『船内磁気コンパスによって物標の方位を054°に測った。その時の船首方位に対する自差3°W、偏差5°Wであった。当該物標の真位方位は何度であったか。次のうちから選べ』
うーん、これは真剣に勉強しないとヤバいな。
合格率は9割以上で非常に高い。
これは問題が簡単というより、”みんな真剣、落ちたら恥”と読むべき数字であったようだ。
今日は帰宅してからさっそくロープワークのお勉強をした。
本結びやもやい結びなど、船を係留する時などに使う縄の結び方も試験に出る。
しかし、これは覚えておくと他にも色々な局面で使えそうだ。
リムスキー=コルサコフがロシア海軍の士官で航海士だったのは有名だが、シェエラザートの波や嵐の描写が実に巧みで素敵である。
くじけそうになったら高田屋嘉平とリムスキー=コルサコフに感情移入して、何とか楽しみながら勉強してみようと思う。
下の写真は”もやい結び”で繋がれたビールとグラス。
