指揮者 (ニヤリとしながら)「繰り返しは有りで・・」
楽員たち (少々おどけて)「え〜〜?」 「マジで?」
何故ほとんどの指揮者は繰り返しをしたがるのだろう・・。
一方でほとんどの楽員は繰り返しが嫌いである。
例えばヨハン・シュトラウスの有名な「美しく青きドナウ」(略称:青ダニ)。
導入部が終わって第1ワルツから第4ワルツまで続き最後にコーダ(終部)がある。
各々のワルツには全て繰り返し記号が書かれており、コーダは数小節で終わる短いバージョン(第1コーダ)と2ページある長いバージョン(第2コーダ)がある(※)。
仮に全ての繰り返しを書かれている通りに行って長い方のコーダを演奏した場合の所要時間は22〜3分。
一方で、全ての繰り返しをせずストレートで進み短いコーダに進んだ場合の所要時間は10分弱。
この12〜3分の差は大きい。キツい労働時間は減るし、その分早く家に帰ってビールが飲めるというものだ(笑)。
”青ダニ”に限らず多くの楽曲には繰り返し部分が設けられており、繰り返しを実行するか否かは原則的に演奏者の裁量に任されている。
札響の指揮者お二人は繰り返しが好きなタイプの最右翼かもしれない。
今日は高関さんの第九の練習だったが、原典主義者の高関さんは他の指揮者がやらない2楽章の前半部分の繰り返しをしっかりやる。繰り返しのために書かれているいわゆる「1括弧」部分は滅多に演奏されないため皆演奏に不慣れである。この数小節だけいきなりオケがヘタになる(笑)。(本番は大丈夫です・・念のため)
ちなみにこの繰り返しをするために労働時間は7〜8分増える事になる。
尾高さんも繰り返し大好き指揮者の筆頭である。
つい先日もメンデルスゾーンの「イタリア交響曲」の第1楽章の”幻の1括弧”を演奏した。ほとんどの楽員はこの練習で初めて弾いた。弾き慣れた曲なのにこの部分だけオケが一瞬ヨレヨレになったのは笑えた。それを見てニヤついている尾高さんは相当なサディストである。
原典主義なのかサディストなのか、とにかくほとんどの指揮者は楽員の気持ちとは裏腹に繰り返しが大好きである。
私が知っている唯一の例外は故・山本直純さんであったろうか。
直純さんは練習でよく言っていた。「繰り返しは無し。みんなの好きな全スト(全部ストレート)だから」。
・・・本当に惜しい人を亡くした・・。
オケの楽員が繰り返えしを好きになる方法を今日練習場で皆と雑談しながら思いついた。
それは『演奏時間による給料の従量制』。
演奏時間が伸びるとそれだけ給料が上がります。
繰り返し大歓迎!!!。繰り返し全アリで皆大喜び!。
それは冗談として・・・。
かく言う私も繰り返しは少ない方が嬉しい。いえね、けして演奏を怠けたいと思っているのではないですよ!。ただ、短期集中というか。ギュギュ!っと凝縮した方がお客様にも喜んでいただけるのでは?と。そう思うわけですよ。
ただし私が死んだ時には葬式で同僚達にこうやって送ってもらうことにしている。
司会 「出棺は故人が生前に愛して止まなかった”青ダニ全スト第1コーダ”でお送りしたいと思います」
♪タラララ〜〜〜・チャチャ・チャチャ・・・
(※)第1コーダは本来男性合唱付きで演奏する時のために書かれたオプションです。知っていますので抗議のメールは送らないよーに!