2005年10月30日

オッコ・カム

先週からオッコ・カム週間であった。
小樽でのほくでんファミリーコンサート、そして札幌での定期演奏会
と続けてカムの指揮でシベリウスを演奏した。

小樽のほくでんではシベリウスの2番交響曲、カレリア、
フィンランディア、アンダンテ・フェスティーボ。
定期は同じくシベリウスのポヒョラの娘、交響曲第7番と4番。

ほくでんファミリーの練習日は1日、本番1回、定期は3日間で本番は2回。
計7日間、カムの指揮でシベリウスをぎっしりやった事になる。
今週の札響はまさにカムとシベリウス漬けであった。
カム制作のシベリウス味の漬け物か佃煮が出来そうな勢いであった。

今を去ること四半世紀前、中学生だった頃にシベリウスのレコードを
始めて買ったのがオッコ・カム指揮、ベルリン・フィルの
シベリウス2番交響曲だった。
私のシベリウスとの出会いもそのレコードによってもたらされた。
そのレコードはそれこそ擦り切れるくらい聴きこんだ。
フィンランド国立歌劇場管のコンマスを辞し、カラヤンコンクールで優勝し、
指揮者としてデビューを果たしたあの頃カムは若干25才だったのだ。

それから私はすっかりシベリウスのオーケストラ作品にハマって、
レコードを買い集めた。
色彩感豊かなカラヤンもいい。
精緻を極めたベルグルンドも捨てがたい。
ヘビー級でロマン溢れるバルビローリにも痺れる。
世に名高いシベリウス振りは数あれど、
やはり刷り込み効果なのだろうか、最初に聞いたカムの、素朴な中にも
内なる凄味を感じる演奏には魅了され続けた。

そんな訳で、今回の定期はラインナップが分かった時からとても楽しみに
していた。オーケストラ奏者という仕事を選んでこういう役得に
与る時にこそを醍醐味を感じる。

長年温められてきた私の中のカム像は、『痩せ型で長身、寡黙で少し神経質、
髭を貯えた彫りの深い顔だちから哲学者風のキャラ』を想像していた。
だが実際に札響に姿を現したカムは、『太鼓腹で恰幅よく、終止にこやかで
オヤジギャグを飛ばしまくり、陽気で気さくなペンションのオヤジ風キャラ』
であった。

・・・、まあ、いい。多少イメージとは違ったが、本物のオッコ・カムには
違いあるまい。

オッコ・カムは子育てのために仕事をあまり入れないとか、趣味のサーフィン
などをするために仕事をあまり入れないとか、あまりオケとの練習をしないという
前評判を聞いていたので、今回はひょっとして適当に流されちゃうの?という
心配も無きにしも非ずだったが、とんでもない話しで、それはそれは濃密で
長い練習が毎日展開された。
決められた練習時間の最後の1分まで残さず毎日キッチリ練習があり、
正直相当疲れた。皆が疲れるほどカムは元気を増し、ギャグを連発していた。

オッコ・カムが来るとのことで、張り切って本番の2週間位前から譜面を持ち帰り、
家でCDと共演までして一人さらいまくった揚げ句、一連の練習で
多少飽きが来て、肝心の本番で僅かに意識が遠ざかる瞬間がある程だった(笑)。
これではまるで遠足を楽しみにするあまり眠れない小学生と一緒ではないか!
「カムの指揮で、しかも本番で睡魔に襲われるなーーー!」と、
一人ボケ&ツッコミを入れたくなるありさまであった。

疲れた原因はそれだけではなかった。
カムは、それはそれは溢れでる音楽は素晴らしく、楽曲への理解は他の追随を
許さない揺るぎないもので説得力に満ちあふれ、人間的な魅力も相当な
もので誰からも好かれるオーラをまとっていた・・・。
しかし、指揮が分かりにくい・・・。
い、今って何拍目?? みたない瞬間がかなり頻繁にある。

シベリウスの4番や7番はけしてメジャーな曲ではなく、
また、シベリウスは耳ざわりが良いので聴いている限りあまり感じない
のだが、実は難解な部分も多い歴とした20世紀の現代音楽。
今回はやっとカムの指揮に慣れた頃に終わってしまったが、
是非とも度々客演して欲しい指揮者だ。
回を重ねるごとにシベリウスの神髄を垣間見る事も増えるのではないだろうか。
元々、札響の主要レパートリーにシベリウスを加えるべきと
私は激しく思っているところでもある。

そして今回は、中学生の時に買った件のレコードを持って
カムの楽屋を訪れサインをねだった。
共演のソリストや指揮者にサインを求める事はほとんどしないのだが、
今回は特別である。
「中学生の時に買ったあなたのレコードでシベリウスを知り、
今回の演奏会を楽しみにしていた」と言うと、とても喜んでレコードに
サインしてくれた。

今回の演奏会で札響を気に入ってくれていたらいいのだが・・。

下の画像はカムにサインしてもらったレコード。

カム

Posted by arakihitoshi at 22:57│Comments(6)││音楽 
この記事へのコメント
ブログいつも楽しみにしています。
プロの方でも見にくい…そんな指揮ってやっぱりあるんですね。オッコ・カム氏は、尾高さんも「素晴しい指揮者」と仰っていたので、一度聴いてみたいです。
それから、大阪公演は無いのでしょうか。あったら是非に!と思っているのですが。。やっぱりkitaraに行くのがいいかなぁ。
Posted by 楢野久里子 at 2005年11月01日 00:53
見にくいというか分かりにくい指揮の人はいます。
外国人の指揮者に多いです。というか、日本人指揮者は棒の技術では世界的に定評があります。
もちろん、見やすい、見にくいだけで指揮者の技量は測れませんが・・。
大阪公演の予定は今のところありませんが、ぜひキタラにお越しください。やはりオケは本拠地ホールで聴くのが一番です。
Posted by あらき at 2005年11月01日 15:53
有難うございます。「分かり難い」んでしたね、失礼しました。最近、色んな演奏家の方、特に指揮者の方を知りたいなと思い始めたところなので、奥深いお言葉ありがとうございました。
まだ見ぬKitara Hallとまだ聴いたことのない札響のみなさんの演奏…憧れがだんだん大きく膨らんできております。地域に根付いたオーケストラって素敵ですよね。カレンダー申し込む予定です
Posted by 楢野久里子 at 2005年11月02日 01:15
じゅん@長野県安曇野市と申します。こんにちは。
マエストロオッコ・カムのシベリウスの2番は荒木先生と同じレコードをかつて保持しておりました(今はなくしてしまい残念)。近年、CDで買いなおして聴きましたが、あのベルリンフィルが非常に素朴なシベリウスらしい音を出しているので驚きました。故マエストロカラヤンが振ると、同じシベリウスでもグラマーな音になるのに不思議ですね。今回は仕事の関係で(土曜日の演奏会がなく残念)キタラに行けませんでしたが、またチャンスを見つけてシベリウス聴きに行きたいと思っています。
Posted by じゅん at 2005年11月06日 10:57
あらきさん、こんにちは。
実は31日の定期2日目、聴きに行きました(^^)。
ラッキーなことに日曜日に札幌出張があったので、
滞在を一日延ばしました。

無用な虚飾のないシベリウスにふさわしい演奏だったと思います。
晩秋の北海道の空気も手伝って、とっても満ち足りた気持ちに
なりました。

4番、7番というのは、シベリウス・プログラムとしては、
ある意味究極の組み合わせです。
こういった作品が札響のレパートリー・十八番になって、
「慣れた頃には終わった」以上の演奏が常にできるようなることを、
ファンとしてはうれしい限りです。
Posted by なかやま at 2005年11月08日 15:39
4
おんなじ世代ですね。
親父の持ってたカラヤンのLP(交2番。うろ覚えですが,彼の顔がどーんと撮影されたジャケットのLP。モノラルだったかも。東芝EMI?に録音ありましたっけ?)でシベリウスを知り,小遣いもなく高校・大学とひたすらカセットでFMを録音してました。
オッコ・カムって,その頃スッゴク騒がれた指揮者だったのでは?
大学生の時にバイト代で本気で買うつもりだったんですが,ついに買わずじまいで30年近く経ってしまった。
カレリア組曲が好きで,これの刷り込みとなった80年代前半FM録音したカセットの演奏者がわからず,なんでもいいからCD買うか,と思いつつシベリウスでググり抜けてると,ここへ到着したんです。
Posted by 初老 at 2007年10月28日 23:30

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