今年はモーツァルト生誕250年のアニバーサリー年である。
”のだめ現象”もあって、巷はちょっとしたクラシックブーム、らしい。
TVがそう言っていた。
このブームが本格化してくれればいいと心から願っている。
ここのところ、札響の公演プログラムにもモーツァルトが多い。
27、28両日の定期演奏会もオールモーツァルト。
その次31日の北広島公演、翌日の豊頃公演もオールモーツァルト。
公演が多いと楽員はさぞ忙しかろうと労いの言葉をいただくことも多いが、
実はそうでもない。
正直言うと少し弾き足りない気がするくらいなのだ。
ご存じの方も多いと思うが、モーツァルトの時代のオーケストラは
現代のオーケストラよりずっと小さい。小人数であった。
だからモーツァルトを演奏する時は現代でも人数を減らして演奏する。
次回定期で演奏する交響曲第31番は12型。
12型というとテレビのサイズみたいだがそうではない。後で説明する。
ヴァイオリン協奏曲は10型。戴冠ミサに至ってはヴィオラが無い。
ではヴィオラの人たちはどうなるかというと、戴冠ミサの練習の間は
奥で休んでいるか、練習順が最後だと帰ってしまう。
12型とか10型とかいうのは、ファーストヴァイオリンの人数を基準にして
オーケストラ全体の大きさを表したものである。
弦楽器は2人でひとつの譜面台を見る。譜面台の事をプルト(pult)と
言うので、12人だと6プルトで6列に並んだ状態になる。
通常は楽器が大きくなるほど2人ずつ減っていき、
12型の場合、弦楽器の人数は
1st.Violin 6プルト(12人)
2nd.Violin 5プルト(10人)
viola 4プルト(8人)
cello 3プルト(6人)or3プルト半(7人)
contrabass 2プルト(4人)or2プルト半(5人)or3プルト(6人)
という事になる。
ちなみに、札響のチェロ奏者は8人いるので、今回の定期は2人がお休みになる。
このお休みは”降り番”と言って、通常は交代で取っている。
現在札響の弦楽器は12型に少し足りない位の人数が揃っているので、
今回はお休みの人が多い。
「そんなもったいないことするな。全員出せばいいだろ」という声が聞えてきそうだが、
そうもいかない理由がある。
弦楽器が全員出たら管楽器や打楽器とのバランスが全く悪くなってしまうのだ。
今たまたまモーツァルトのピアノ協奏曲第21番のスコアが手元にあるが、
この曲の編成は・・、
フルート1、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、
ティンパニー、弦楽器郡。となっている。
(管楽器や打楽器の全体の人数も少ないが、クラリネットやトロンボーンが無い)
モーツァルトの時代の編成はこの曲に限らず、だいたいこんなもんである。
一方で近代のマーラーの作品を例に挙げると、
手元にあるマーラーの交響曲第6番では、
ピッコロ、フルート4、オーボエ3、イングリッシュホルン、D管クラリネット1、
B管クラリネット3、バス・クラリネット1、ファゴット4、コントラファゴット1、
ホルン8、トランペット6、トロンボーン3、バス・トロンボーン1、チューバ1、
ティンパニ、打楽器12、ハープ2、チェレスタ、弦楽器郡。となっている。
モーツァルトの方は管楽器・打楽器の合計が10。
マーラーの方の管楽器・打楽器の合計は56。
弦楽器に関しては両者ともいとも簡単に”弦楽器郡”と書いてくれているが、
10に釣り合う弦楽器の人数と、56に釣り合う弦楽器の人数は
相当違わなければおかしい。
仮にモーツァルトで弦楽器を無理に大人数にしたとしたら、弦楽器奏者たちは
バランスと取るために、生き生きとした表現やフォルテ(強音)の表現が
できなくなるだろし、管楽器も不自然に大きな音で演奏しなくてはならなくなる。
マーラーなど後期ロマン派の曲を演奏する時は通常弦楽器は18型か少なくても16型で演奏する。
チャイコフスキーなどのロマン派ではだいたい16型か少なくても14型で演奏する。
常に楽曲で指定された管楽器と弦楽器のバランスを考えて編成が決められている。
だから交響楽団たるもの最低でも14型くらいを満たす従業員は揃えていたいものだ。
ちなみに大編成の時に、人数が足りない分に関しては、お手伝いの奏者を
入れる事になる。こういう人たちを業界ではエキストラ(略して”トラ”)と呼ぶ。
トラは全てを札幌で調達できる訳ではないので、東京からも呼ぶ。
だから大編成の曲を演奏するのは経費がかかるのだ。
理想のオーケストラの従業員数は? これは難しい問題だ。
弦楽器16型、管楽器4管、というのが札幌クラスの都市で考える理想では
ないだろうか。と私は思う。
4管というのはフルートやオーボエなどの木管がそれぞれ4人づつ。
ホルンは6人、トランペット4人、ホルン4人、チューバ、打楽器4人くらい。
これくらいいると、ロマン派ならトラを入れずに全てカバーできるし、
近代作曲家でも特殊楽器や特別な使い方をする楽器にトラを入れるだけで済む。
現在の札響の編成は弦楽器14型にだいぶ足りない、管楽器は3管+αといったところ。
当然ながら事業費は無尽蔵ではなく、札響の経営もかなり苦しい。
完全な16型は今は夢のような話しだが、いつか実現できる日がくればいいと思う。
さて、それでモーツァルト・イヤー。
蕎麦や米が嫌いな日本人がいないように、モーツァルトが嫌いなクラシックファン
もいないだろう・・。
モーツァルト・プログラムは魅力的だが、休みや降り番が増える。
ちょっと調子が狂う。室内楽の演奏会が増えればそれもいい。
なんとも複雑な感じである。
ブログで音楽の話しをしたのは、すごーーく久しぶりの気がする。
こちらも複雑な感じである。
※数字に一部誤りがあったので訂正しました(1/26/9:05)
