2006年03月02日

CDと共演する

今回は久しぶりに音楽の話し。
私もいろいろ横道に外れているが一応本職は音楽家である。
こう見えても巷のクラヲタたちを蹴散らして余りある知識と技術はある・・・・・はず。
今日は私の練習方法のネタバラしをするのでシロートの諸君は参考にしてくれたまえ!

さて本題。
手っ取り早く楽曲を理解するにはCDと一緒に演奏してみるのが一番だ。
スコア片手にCDを聴きこむ作業も大切だがなにせ時間がかかる。
ヘッドフォンを片耳に、もう片方の耳で自分の出す音を聴きながら
CDと共演してみるのだ。
これができれば実際にオーケストラの中で演奏して困ることはまずない。

オーケストラの曲で初めて演奏する曲は、難しい所を一通り練習し、
指が周るようになったらCDと共演。
フレージングや音色の変化、微妙なテンポや音程の設定、演奏上の慣例など・・・、
音楽には音符で表しきれない表情が沢山ある。
これらを咀嚼し自分なりの答えを出さないことには、その曲を”弾ける”とは言えないのだ。

もっと低次元の話しをすると、早くて難しい箇所をいくら完璧に練習しても、
落ちて(どこを弾いているか分からなくなること)しまっては弾くことができない。
休符を数えるのも練習のうちである。それにもCDとの共演は非常に有効だ。

さて、CDとの共演はオケの曲に限ったことではない。
室内楽やソロの演奏会に臨む場合はもっとシビアに楽曲と向きあうわけだが、
まずはスコアと手に入るかぎりのCDを入手する。
そしてパート譜に他のパートの重要な音なんかを鉛筆で小さく書きこんでいく。
一通り噛み合わせを理解して音符を音に変えることができるようになったら、
やはりCDと共演してみる。
ヨーヨーマとはよく共演するが、この時点で大抵は激しく打ちのめされる。
「こんなに上手に弾ける人がいるなら、何も俺がわざわざ弾く必要ないじゃん」
などと思うわけである。
そして、「いやいや、ヨーヨーマと張り合ってどうする・・」と気を取り直し、
再び練習再開。

4月にバッハの無伴奏を仕事で弾くのだが、そろそろ練習を始めなければならない。
CDとの共演でバロック音楽は困ることが多い。ピッチが現代のものと違うのだ。
バロック時代のピッチは現代のそれより半音〜全音低い。
現代のピッチで演奏しているCDの方がまだまだ多いが、
時代は原典主義に向かっている。ピッチやあるいは奏法までバロック時代を意識
した録音が目立つようになってきた。
例えばバロックチェロの名手ビルスマなどはバロックピッチで演奏してる。
ヨーヨーマも一番新しいCDでは半音近く低いピッチで録音している。
これだと現代の私たちがチューニングしている442hzでは共演できないのである。
ならばこちらもバロックチューニングで弾けばよさそうなものだがそうもいかない。
普段オーケストラで442hzかそれ以上高い音程で演奏しているので、
楽器も体もそういう音程に慣れてしまって、急に低いピッチでは演奏できないのである。
バッハの無伴奏だけに2ヶ月かかりきりになれるなら可能かもしれないがそうもいかない。

仕方がないので、ビルスマやヨーヨーマのCDをPCにリッピングして、
ピッチを波形編集ソフトで440〜442hzでちょうどいいくらいに上げて、
再びCD−Rに書き込んで”共演用CD”を制作する。
例えばマの最新の無伴奏チェロソナタのCDは、半音までいかないが、
だいたい半音に近いくらいピッチを下げて演奏している。
実際にどの程度音程を下げているかの正確な判断は簡単なようでけっこう難しく、
仮にある特定の音をサンプリングして機械的に測定しても、
音程はヴィブラートや弓圧で容易に変化してしまうので正確には分からない。
ここはやはり人間様の耳で判断するしかないのである。
前述のマのCDの場合、半音100セントとして80セントくらい上げると、
ちょうど442hzの現代チューニングで共演可能になる。

そうやって黙々と偉大な演奏家たちのCDを共演用に改造するのである。
もし試したい方がいたら、リッピングにはNero。
ピッチを上げる波形編集ソフトはAudacityがお薦めである。
フリーの波形ソフトは色々試したが、速さを変えずにピッチを変えることができる
ソフトは意外と無い。Audacityは高機能で優秀だと思う。

こういう作業ははたして芸術に対する冒涜になりはしないか・・・、
という内なる声が聞えないでもないが、
まあ細かいことは、いずれゆっくり考えよう・・・。
取り敢えずは目先の演奏会が大切である・・。

(※)ここに書いた練習法はあくまで荒木個人の方法です。プロはみんな
こうやっている−というものではないので、反論のメールは送らないよーに!(笑)

Posted by arakihitoshi at 01:56│Comments(3)││音楽 
この記事へのコメント
素晴らしい努力!! そのCD聴いてみたい。今度はそれを特集しない?
練習よりも、ピッチをあげる作業でPCに向かってる姿の方が・・・
心なしか楽しそうに思ったんですけど
気のせいですよね。
Posted by みちこ at 2006年03月02日 13:49
そうですね。すごい楽しいです。
カッコいいレーベルまで作ってズラーっと出来上がった時の達成感は
素晴らしいものがあります。
それで満足して練習しなくなる恐れがあるのがこの方法の欠点です(笑)

Posted by あらき at 2006年03月02日 16:39
お久しぶりです。ヨーロッパのオケのCDと共演(?)するときも、高すぎて追いつけないときとかありますよね?最近めんどくさがってあまりやってませんが、昔はCDを再生しながら直にピッチシフトできるソフトでがんばって下げていました…(^^;;
Posted by おーとも at 2006年03月06日 14:10

コメントする

名前
 
  絵文字