先週末、札響のチェロ奏者6人らと
バッハの無伴奏チェロ組曲全6曲を1曲づつ弾く演奏会を終えた。
共演ならぬ競演なわけだが、はっきり言ってわたしは
「人は人、自分は自分」と心底思えるほど強い人間ではない。
同僚奏者たちと張り合う気持ちもあるし、
自分だけが失敗したらどうしよう・・、という恐怖もあった。
そういう意味でバッハの偉大な作品を弾く以上に、
”競演”は精神的に相当にシンドいものがあったし、同時に勉強にもなった
ところで最近、新書が流行っている。
新書といえば少し前までは歴史や自然科学などを淡々と紐解くものが主流だったが、
最近流行っているのは少し違う。
「バカの壁」、「国家の品格」などに代表される、現代の物事の考え方を説く本。
「頭がいい人、悪い人の話し方」、「他人を見下す若者たち」などに代表される、
バカと利口を定義付けする本に大別されると思う。
他はインターネット関連、脳関連あたりか。
本屋はかつて無いほど新書コーナーが拡張され多くの新書が平積みになっている。
話しは変わるが、
先日新聞でネット上にいわゆるブログを書いている人が800万人に達したという記事を見た。
新生児や今際の際の老人を除くと、
日本人の約十人に一人がブログで自己を表現している勘定になる。
報道された800万人はYahooの様なポータルサイトが提供するブログ保有者の数だろうから、
例えばARAKIページの居候部屋の住人などは数に入っていないのだと思う。
そうなると800万人という数はもっと膨らむはずだ。
”活字離れ”などという言葉は全くの見当外れということになる。
この圧倒的なブログ数と新書の流行、実は無関係ではないと思う。
きっかけはどうであれ取合えず始めたブログも、
最初はミクロな自己表現で満足できたものが、やがて人の書いた文章が気になりはじめる。
そのうち自分の文章がどの程度のものなのか、延いては自分は頭がいいのか悪いのか?
という疑問が頭をもたげ、答えを与えてくれそうな新書が流行るわけだ。
これは前述のバッハの”競演の法則”から導き出された結論である。
皆「人は人、自分は自分」と思えるほど強くはないのだ。
やはり皆弱い人間たちなのだ
そういうことなのだ。これでいいのだ。