2006年07月30日

(イメージ)

インスタントラーメンの袋の写真。
湯気が立ち登るラーメンの上に盛りつけられた肉汁の滴るチャーシュー、茹でたて卵、ほうれんそう、ナルトにシナチク。
食欲をそそる写真の下に遠慮がちに書かれた小さな文字・・(写真は盛りつけ例でありイメージです)

分譲マンションの広告。
フローリングに白い壁。モダンなタイルの対面キッチン。大画面液晶TVを見ながら高級家具でくつろぐ幸せそうな家族。窓の外には一面の夜景。
ここにも写真の下に遠慮がちに書かれた小さな文字・・(写真はイメージです)

もうお分かりであろう。
今日のお題は 【(イメージ)】かっこいめーじ である。

例えば、「写真は真実ですが私たちのイメージとは異なります」と言うなら分かる。
あるいは、「上のイメージは真実とは異なる合成写真、あるいはねつ造です」でも分かる。
しかし、「写真はイメージです」という言葉は明らかに矛盾している。

この「写真はイメージです」と言う単なる”アリバイ作り”が世間公認となってしまっているのはいかがなものか。
「写真と違うじゃないか!」とクレームを付けたところで、「ですから、これはあくまでイメージであって実際とは異なります。ここに”イメージです”と書いてあるじゃないですか」という言い訳が成立するということだ。
端的に言うと「”これ”は”これ”じゃない」という言い訳が成立するということだ。

ラーメンと分譲マンションの例で見られるこうしたありがちな広告は、商品説明であり消費者が通常唯一取得できる商品情報である。にも関らず「”これ”は”これ”じゃない」という言い訳がオッケーなら、例えば妻女に浮気現場に踏み込まれても「今ここにいるのは俺じゃない!」という落語の様な言い訳がオッケーという事になる。

とは言うものの、弱い私たちの志向がこの(イメージ)に大きく影響を受け、実際は有り得ないと知りつつも、ついつい(イメージ)を追いかけてしまいがちな事も否めない。
・買ったはいいが読んだことの無い文学全集。(イメージ)
・実際はゲロまみれ、うんこまみれ、アンド寝不足の子育て。(イメージ)
・一緒に映画に行こうね、旅行もしようね・・、仲睦ましい夫婦生活(イメージ)
・最近買ったヴァイオリン、休日は仲間とモーツァルトを演奏(イメージ)
・家を新築、大きく開いた天窓。実際は暑くていられない(イメージ)
・ちょっとしたパーティー用に買ったドレス。で?ちょっとしたパーティーって?(イメージ)
・デパートの食堂。ボクはお子様ランチ、ママはナポリタン、パパはステーキ(イメージ)
・「あなた、お帰りなさい。ご飯にする?、お風呂にする?」(イメージ)
・「わたし・・、課長のことなら何でも知ってるんですよ」(イメージ)
・海水浴場でジンギスカン、口の中が砂だらけ・・(イメージ)
・スポーツカーの似合う年下の彼 (イメージ)
・’70年代フォークソングに出てくる様な、貧乏でも幸せだったあの頃(イメージ)
・パイプを燻らしながらギターを弾く(イメージ)
・ハンモックでウトウト・・、快適なキャンプ(イメージ)

枚挙に暇がないとはこの事だ・・・。

ところで、毎年巡ってくる野外演奏会。
芝生に寝転びビール片手にクラシック音楽。木漏れ日と心地よいそよ風が頬を撫でる。
時折聞こえる木々のせせらぎと鳥のさえずりが不思議と音楽に調和する。
「そうか・・、自然と音楽は一体なんだな・・・。」とつぶやいてみる。(イメージ)

え? それがなんで(イメージ)なのかって?
来れば分かりますよ。


田村










(写真はイメージです。本文とは関係ありません)

Posted by arakihitoshi at 01:12│Comments(8)││雑感 
この記事へのコメント
私、演奏会は 野外より、屋内で聴く方が好きですわ。
だって・・・ねえ・・。(ぼそっ)
Posted by さえ at 2006年07月30日 03:08
屋外では、ホールで聴こえるような細やかな音はほとんど聴こえなくなってしまいます。それに、屋外で演奏する事を想定した曲でない限り、作曲家の意図した効果も出にくくなるのでは? 何年か前、ある野外演奏会を聴きに行った時 聴いた曲の中に、客席(芝生)の後ろから、金管楽器の音が鳴る曲が有ったのですが、ステージ上の音(正確には、マイクで拾ったスピーカーからの音)と上手く響きあわず 本当は、どう聴かせたかったのか、考えこんだ事がありました。もし、その部分が その曲の持っている『良さ』の一つで、会場の条件の為にそれを チラリとも味わう事が出来なかったのだとしたら?何だか 悔しいではありませんか。野外演奏会の企画や意図自体は、否定する気はありませんし、「雰囲気を味わう」と言う意味では、良いのかもしれませんけれどね。(^^;)

Posted by さえ@補足 at 2006年07月30日 04:42
演奏される音楽のジャンルにもよる(ロックやジャズフェスは、よほどの荒天にでもならないかぎり決行され、会場全体がずぶ濡れでノリまくってたりしますが)と思いますが、よくテレビなどで見る海外のクラシック野外コンサートは、元気の良い曲、明るい曲、楽しい曲などが多く、あまり小難しい演目を見たことがありません。お客さんも目を閉じてじっくり味わって聴いている人など見当たらない。立ち上がって体を揺らしてたり、歌ったりもしてる。
まあPMFの若者オーケストラのように短期間でレパートリーが限られている場合は野外用のプログラムを特別に組んだりできないだろうけど、腕組みしてじっくり聴きたいムキは、コンサートホールへどうぞ、でしょうね。(でも芸術の森の野外ステージも、新しくなってからずいぶん音響が良くなったなあと感じました)
Posted by hi at 2006年07月31日 14:23
一方、野外コンサートは時として自然との戦いでもあります。雨天(途中で降り出すとパニック!)や強風の日などは弁当もおやつも広げられないし音もよく聞こえない。気温が低かったり、逆にカンカン照りだったり、暑さ寒さも終演まで。「演奏者は悪天候の中がんばって弾いているんだから、我々もがんばろう」って感じでみんな途中で帰ることもなく、なんだか風雨の中の我慢大会のような演奏会が、かえってステージと客席の妙な一体感を作り出し、感動的なラストを迎えたりしたのを以前見たことがあるので、天候に左右されるのも一概に良いとも悪いとも言えないなあと思ったもんです。野外コンサートとは、そういう「天災」を覚悟して臨まねばならないのですっ! 敷き物・雨具・防寒着、備えあれば憂いなし。「えぇぃ、そこの子供っ、走るな!」
Posted by hi at 2006年07月31日 14:24
やはり皆さん野外に関しては同様の感想をお持ちですよね。
芸術鑑賞と言うよりは、自然との闘い? みたいな? じょーたい?、ですよね。やっぱり。
音響に至っては楽器の音色よりもマイクの性能・・、もはや何も言うますまい・・・。

ステージの上は楽器の管理に肝を冷やしたり、譜面が風で飛ばされたり、洗濯ばさみで押えるのに必死だったりするのですが、まだ屋根があるから命に別状はないのですが、炎天下でジッと耐えているお客さんたちは見ていて少し心配になります。気分が悪くなったら遠慮無く立ち上がって日陰に非難してくださいね。

そうした状況でもなお、上の偉い人たち野外ピクニック演奏会を企画させ、人々を演奏会場へと駆り立てる原動力は何か? (イメージ)も一役買っていると思うのです。


Posted by あらき at 2006年07月31日 23:49
そういえば今から25年前、タングルウッドの指揮者コースに参加して勉強していた時、「シェッド」という野外音楽堂で、小澤さんとボストン響による「田園」と「春の祭典」というプログラムを聴いた事があります。「シェッド」は舞台を要に、客席部分の上にも扇のように屋根が架かっていて、基本的には雨に濡れる事はありません。しかし当日は朝からすごい湿気で雲行きもおかしく、案の定「田園」の第2楽章辺りからポツリポツリ。第4楽章ではイナビカリの他に、周りから雨が吹き込むなど直接的効果も加わって、圧倒的な迫力でした。ちなみに、休憩後の「春祭」になっても嵐は止まず、最後の「いけにえの踊り」ではオーケストラと雷の変拍子競演(饗宴?)となり、聴いているほうも何だか分からなくなりました。振っていた小澤さんは大変だったろうなぁ。
Posted by 庭師のT関 at 2006年08月01日 11:12
庭師のT関さんようこそ)^o^(

”直接的効果”に大ウケです。(イメージ)が(現実)に昇華した非常に希有な例ですね(笑
ベートーヴェンやストラヴィンスキーが表現しきれなかった部分を自然が補ってくれた演奏会としてとても貴重です。
来年は我が社も野外で田園を取り入れて皆で雨乞いをしましょう。

ところで、田園の5楽章で雨が上がり晴れ間が差すことなく、ず〜っと嵐だったんですね。そこまで現実は甘くないか・・・
Posted by あらき at 2006年08月02日 11:08
野外ステージは、お弁当を食べながらビールを飲みながら寝転びながらポジティブに楽しんでる、(芝生席でもはじっこ)人々が確かにいるのです。 そこでもっと良い音で聴きたい人は、ホールに足を運ぶよい機会になっているのですよ。 同じプログラムを、ホールで聞いた後に野外で見ている人もいます。ホールと野外は、担ってる役割がちょっと違う気がします。それにしても、演奏する人々は楽器の管理がとても大変なことをお察しします。どうか、長く広いお心で!m(__)m
Posted by 野外客 at 2006年08月02日 21:16

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