室内楽公演の実態
12月18日にやったノンノン・マリア弦楽四重奏団演奏会の集計が出た。
室内楽は儲からないというのは業界の常識だが、一般にはあまり知られていない数字をご披露しよう。
ノンノンの演奏会は自主公演、つまり主催者は自分たちである。プログラミングや日時も全て自分たちで決められる代わりに、赤字のリスクも当然自ら負うことになる。
主催者は一番偉いので演奏会の財務状況をブログで公表しようが勝手ということでもある。
チケットは1枚3,500円(手売りで3,000円で売ってる分もかなりある)が87枚。これにはプレイガイドで売れた10数枚も入っている。これが収入、貸方の全てである。招待券も出ているがこれは直接的な収入には入らない。
ここからホール賃貸料、当日かかる付帯設備料(照明、椅子、録音など)を足した約80,000円、チラシの印刷代(2万枚分)、チケットの配布や宣伝などを委託している業者へのマネージメント料を差し引くと、マイナス31,200円。
仮に4人で割ると一人あたり8,500円ほどの赤字、ということになる。
ちなみに6月の演奏会では全体で8万円の赤字がでた。これに懲りて今回はリハーサルではホールを使わず上階の狭いスタジオを使ったりして経費を切り詰めまくった。
赤字が一人8,500円で済んだのは経費削減が功を奏した結果である。
自主公演は好きな曲を演奏できる。その準備のために時間もかけられる。
主催者から「映画音楽をやってくれ」とか「トーク付きでやってくれ」とか言われないで済む。映画音楽やトークが駄目だと言うわけではない。クラシックに馴染みのないお客には映画音楽やトークは絶対に必要である。
しかし、演奏家のはしれくとして毎度毎度トークばかり褒められてもナンである(笑)。やはり芸術とも関っていたい。それが赤字を出してまで演奏会を開く理由である。
こうやって書くと少し惨めな気持ちになってこなくもないが、客が入らないのはノンノン・マリアだけではない。バルトーク弦楽四重奏団のような世界最高峰の団体ですらキタラの小ホールを満席にすることができないのだ。
招聘した音楽事務所は招聘団体への高い出演料と伸び悩むチケット収入の狭間で大赤字を出しているはずである。
どうすれば室内楽の演奏会に人を呼べるのか・・。チラシも撒いたし新聞にも載せた。まずはこのジャンルに染みついている地味で難解なイメージを払拭することが先決だと思うが、これがなかなか難しい。
やはり依頼公演で稼いで自主公演で吐き出すという構図は業界の普遍なのだろうか。
Posted by arakihitoshi at 23:47│
Comments(5)││
音楽
貴重な数字ありがとうございます。参考になります。
他の団体はどうだろうか?とか気になりますものね。
私達のやり方で良いのかどうかとか・・・・・。
この問題は難しいです。
演奏家のはしれく?はしくれとしては、継続しかないです。
この問題を多少たりとも解消するには、スポンサーをつけるのが
一番手っ取り早いすね。それが難しいのですけど。
いつか札幌に聴きに行ってみたいです。
あらきさんたちの演奏を聴きに・・・・・。
そうですね。難しいところですよね。
継続が大切なのはおっしゃる通りと思います。少しづつでもリピーターを増やす努力ですね。
マーケティング風に言うと、室内楽はコア層が極端に少ないので、一般聴衆=イノベーター層ということになり、演奏者がやりたいものとイノベーターが聴きたい(見たい)ものの開きが大きすぎる、ということだと思います。
スポンサーも以前取り組んだ事があるのですが、練習時間を削って会社に挨拶に出向いたり、パンフレットを持って打合わせだの、清刷りをもらって印刷屋だのなんだのかんだの・・、を思うと二の足を踏んでしまいます。
あけましておめでとうございます。
自主公演の収支、きわどいですよね。
特にあのホールで黒字を出すのは難しいですね。
結構ホールにかかる上に座席数が少ないですから、赤字になってしまいがちですね。チケットの料金設定や、チラシの枚数など、いまだに試行錯誤です。
スポンサーといえないかもしれませんが、市などの助成金、大変ありがたいです。一年前に申請しなくてはならないのがちょっと大変ですが。
継続が大切、ですね。今年もがんばりましょう(^0^)/
やはり皆さん苦労されてますね。
1年前に申請の市の助成は札響の楽員にとってはほとんど不可能なのが辛いところです。
札幌市民劇場も助成が貰えますが、かなりの枚数を招待券で配られてしまいます。友人がこの助成を貰ってルーテルで開いた演奏会では200席のうち約70席が無料券で迷いこんできた人で埋められ、会場が「なんだかな〜」という雰囲気でした。
結局、友人・知人に手売りでさばくのが一番確実ですが、一回きりの演奏会ならいいのですが、定期的に長く継続していきたいとなると、この方法は好ましいとは思えません。
いっそのこと札幌で室内楽活動をしている団体で徒党を組んで”音楽祭”の様なものを作ったら効果的かもしれませんね。思いつきですが・・。
宣伝費や会場費も大幅に圧縮できる上に注目度もアップしそうです。
ジモティー・ミュージック・フェスティバル。"GMO" なんてどうでしょ?(笑)
そうなんです、苦労してます。
定期的に継続していくとなると、毎回助成も期待できませんし。
私もリサイタルのときは市民劇場にお世話になったりしますが、招待券は市の選定する審査員にご用意するくらいだったように思っておりました。
結局一回聴いてくださった方が「次回も」と思ってくださる公演を、ということなのかと思います。そうなるとプログラミングを妥協するのか、など管理人さまのおっしゃるとおりさまざまな問題がありますよね。
ジモティー。ググッてしまいました。
ジモティー演奏家の音楽祭はないですものね。
PMFに対抗してGMFですか(^^)
いいですね。楽しそうで。実現できたら素敵ですね。
一票投じます(^^)/