2008年02月14日

ソリストの心を想像する

札幌ブラスバンド(札ブラ)とのコンチェルトの本番が近づいてきた。
演奏会案内コーナー」にも書いたが、ヨハン・デ・メイという作曲家が書いた「独奏チェロとウィンドオーケストラのための”カサノヴァ”」という曲を演奏する。
編曲物でははく、チェロとブラスバンドのためのオリジナル曲である。
なんでまた、”カサノヴァ”なのか・・、そしてなんでまた、よりによって私なのか・・。どちらにせよカサノヴァには憧れていた。男の中の男、いや、男の代表。権化といってもよい存在だと思う。演奏できるのは全国に100万人の愛人を持つ私にとっても名誉なことである。


先週3回目の札ブラとの合わせ練習があったのだが、妻(札響ヴィオラ)に聴いてもらった。「ん〜、(チェロの)音量自体は出てるんだけどね・・。何ていうか、音が立ってないというか映えてないというか・・」という感想。
「言ってくれるじゃね〜か、ゴルァ」と思ったが、言われてみると思い当たることは多い。
日常オーケストラの中で主に弾いていると、どうしても「目立とう」という気持ちよりも「周囲と溶けよう」という気持ちが勝って自然とそういう弾き方になっていく。

さらに詳しく妻の意見を聞いてみると、
「少々汚くてもいいからたまにガリっと強い音を聴かせてくれないと欲求不満になる」とのこと。
要するに駒寄りで弾け、ということなのだが、弦楽器は弦を本体の上で支えている駒に近い方に弓を当てて弾くと強く張った音がする。逆に指板に近い方で弾くと柔らかい音がする。
私もレッスンで生徒に「フォルテは駒寄りで、ピアノは指板寄りで!!」と口をすっぱくして言ってはいるが、言うは易しなこともよ〜く知っている。
頭では分かっていてもうっかりフォルテを指板寄りで弾いていたり、あるいは駒寄りで弾いているつもりでもなっていなかったりということはよくある。
アムステルダムで活躍する国際的な日本人演奏家の方が「コンセルトヘボウの人たちもそうなってる」と言っているのを聞いたことがある。
コンセルトヘボウですらそうなのだ。少し安心する・・。


世の中の優秀なソリストたちは、確かに「少々汚くてもたまにガリっとした音」を出している。結果的に輝かしく張った音がオーケストラを突き抜けて聴衆に届く。
ではそういう弾き方が全てにおいて絶対的に正しいかというとそうではない。例えばオーケストラの中でそれをやりすぎると周囲と協調せずに煙たがられ、終いには”スーパーソリスト”などと陰口を叩かれ嫌われ者になるのは必至である(笑)。
物理的な奏法だけではなく、演奏に対する時の気持ちが音に影響する。結果それが奏法にも影響するという相関関係にあると思う。要は場を読んでバランスを保つということだろう。

さて、私にとっての大きな演奏会では、先月はノンノン・マリア弦楽四重奏団の演奏会があり、今月はコンチェルトのソロ。そしてオーケストラの演奏会は日常業務として続いている。
自分なりの演奏上のロールモデルを作るには非常に良い機会である。
気持ちの部分を表にするとだいたいこんなところである。

『オーケストラで弾く時』
「引き立て役ですから・・・、いえいえ、気にしないでください。もちろん一生懸命キッチリと弾きますよ。仕事ですからね。」というプライドだけでは済まない複雑な心境。

『室内楽で弾く時』
「僕たち仲間だよね。何事も相談して決めようね。足並み揃えていこうね。”あいつら地味だけどいい仕事してるよな”なんて言われるカルテットになりたいよね」という『1に平等2に平等、3、4がなくて5に謙虚』というコミュニズムを髣髴とさせる人工的な心境。

『コンチェルトのソロを弾く時』
「とにかく俺が主役だから。俺は上手いしカッコイイし、そういう自分が好きだし、たぶん皆も俺のこと好きだと思うよ。こうして演奏会に来てくれてるわけだからさ」という自信全開モード。
勘違いでも自己暗示でも何でもいいから”俺はオマエ達とは違うんだ!”とでも思わないとあの場所で弾くのはとても無理。


どれに転んでも辛いじゃん!
だんだん鬱になってきたから今日はこのへんにしておこう・・。

Posted by arakihitoshi at 00:35│Comments(4)││音楽 
この記事へのコメント
がんばれーーー
「荒木さんががこちらを向いて弾いていると ウットリ しちゃいますー」
ってメンバー女子が言ってるらしいよ〜
お姿オーラはすでにカサノヴァ。
Posted by みちこ at 2008年02月16日 23:14
うん、ガンガル。ありが邸
Posted by あらき at 2008年02月16日 23:57
5
奏でる時の後ろから抱くようなかたちにしても、その官能的な音色にしても、カサノヴァを演ずるべきはチェロ以外にないと思います。
そして…、当団内でも「あらき様のお姿に見とれてつい入りそびれてしまいそう」という女性の声をよく耳にします!かく言う私も…。

本番で一緒に演奏できることはとても楽しみなのですが、それで最後になってしまうと思うとなんだか残念です…
私たちもあらき様の演奏に応えるべく尽力しますので、よろしくお願いいたします!
Posted by tao at 2008年02月18日 23:53
ありが鼎瓦兇い泙后taoさん
わたしも女性団員のみなさんの美しいお姿に煩悩を刺激され間違いそうになりながら弾いてます。カサノヴァの霊が憑いているのかもしれません・・。(笑)。

でも終わってしまうのはホントにさびしいですね。

Posted by あらき at 2008年02月19日 22:34

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