2008年07月02日

恐怖のステレオおやじ 【2】

ある日、その平和な環境に異変が起きました。
3LDKの間取りにしてはやけに多い引っ越し荷物。それが引越屋のトラックから降ろされて真上の部屋に運びこまれていきます。
その日はたまたま仕事が休みで家にいました。引越は昼頃から夕方近くまで続いたでしょうか・・。
後で分かったことなのですが、この日越してきた上階の住人はマンション分譲時に上の部屋を購入して数年住んでから東京に転勤になり、この度札幌に戻ってきたということでした。
以前から時折上階の部屋に出入りがあったのですが、それは知人かなにかが時々部屋の空気を入れ替えに来ていたようでした。

このマンションは面白い構造で、坂に添って建てられているのですが、A棟、B棟・・という具合に多棟構造になっており、棟の間には駐車場と専用庭があります。それぞれの棟がさらに階段ごとに複数のブロックに別れています。
建物自体は三階建てで、ひとつの階段を6世帯ほどが使う事になります。エレベーターはありません。

さて、引越なので上の階からドタバタと大きな音が聞えます。
でも引越なのだから仕方ないです。夜になっても大きな物音は静まりません。
しかしまあ、家具を動かしたりいろいろあるでしょう。仕方ないです。
静かな環境ともお別れか・・、やれやれ。と思いながら物音に耐えること1週間後の日曜日のことです。

朝9時に上階から聞えるステレオの大きな音で目が覚めました。
この日のことははっきりと覚えています。
私は前夜に室内楽の演奏会と打ち上げがあり朝の9時はまだ寝ていました。
上階から聞えるのは女性ボーカルのジャズのレコードです。
歌詞まではっきりと聴き取れるほど大きな音です。ベースの音がズンズンと響き渡ってきます。
襖一枚隔てた隣の居間から聞えてくるTVの音より、天井から聞えるジャズの音の方がはるかにデカいです。

あまりの大音量に耳を疑いました。
何かの間違い?? 例えばヘッドフォンを付けているのにアンプのスピーカー切り替えがオンになっているとか・・。
昼頃になってやっとステレオの音が止みました。そしていつものドタバタ音がはじまりました。

次の日の夕方6時頃。また大音量のジャズのレコードが上階から響き渡ってきました。
ひょっとして、これからこの騒音が毎日続くの?、と愕然としました。
いやいやしかし、上階の住人はこれ程ステレオの音が階下に聞えているとは知らないに違いない。しばらく様子を見ることにしよう・・。と自分に言い聞かせます。
女性ボーカルやピアノトリオやデキシー調のジャズのレコードが次々と聞えてきます。
相変わらずベース音とバスドラムの低音は天井全体を揺るがしてズンズンと大音量で響いてきます。
ジャズが止むとまたドタバタと家具を動かしているような音が聞えてきます。
それもかなり大きな音が深夜の1時頃まで続きます。

この頃は娘がまだ赤ん坊で、アトピーが酷くてなかなか寝てくれず、寝かしつけるのに苦労していたこともあり、騒音にはある程度過敏になっていたとはいえ、上階の物音はかなりのものでした。

引越があった日から10日目くらいに、管理人さんにそれとなく、「どういう方なんですか?」と訊いてみました。
管理人さんの話しによると、普通の企業に務める50代の夫婦だそうです。
分譲時からの区分所有者というのもこの時知りました。
私はてっきり20代の音楽好きの若者が越してきたのかと思っていたのでとても意外でした。
それに、6世帯しかいない棟の真下の部屋なのだから一言挨拶に来てくれたっていいだろ、とも思いました。

そして2週間が経ちました。
2〜3日前からドタバタに混じって金槌で釘を打つ音が聞えていたのですが、夜の10時すぎになっても釘を打つ音が止みません。
金槌の音でせっかく寝た子供も起きてしまいました。
たまりかねて少し静かにしてもらえないか、意を決して苦情を言いに行くことにしました。
丁重にお願いする形を取ればトラブルになることもあるまい・・と思い、いろいろと言葉を準備して臨みました。

そして上階に行き、少し緊張しながらチャイムを鳴らしました。


【つづく】


Posted by arakihitoshi at 23:41│Comments(0)││恐怖のステレオおやじ 

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