2008年12月11日

忘れえぬ留守電 【後編】

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(前回からの続き。20年前、フリー奏者時代のお話しです。)
さて、その事件とは、


その日は久しぶりの休日だった。
もう昼近かったが、ベッドから出るのが億劫だった。
その頃私が住んでいたワンルームマンションは、練馬の石神井というところにあったのだが、富士街道という比較的大きな通りに面してた。
街道を走る車の音から、夢見心地にも通勤時間がとっくに過ぎていることが分かった。

しばらくウトウトしていたが、空腹に堪え兼ねてやっと起き上がる決心をした。
カーテン越しに見えるこの日の石神井の空は、白々しいほどに晴れあがってた。
遠くからヘリコプターの音が聞える気がしたが、気のせいだったかもしれない。


一気に布団を剥いでベッドから起き上がると、小さなキッチンのコンロに火をつけた。
コンロの上にヤカンが乗っている。ヤカンの中に水が少し残っていた。いつ入れた水なのか記憶が定かではないが、まあいい。
インスタントコーヒーに沸いた湯を注いで飲んだ。
17インチのテレビに映ったワイドショーは、飽きもせず宮沢りえのヘアヌード写真集がどうしたとか、そんな芸能ネタを垂れ流していた。


私は着替えて、近くの喫茶店で昼食をとるためにマンションを出た。
マンションの脇にとめた自転車に乗り、ふらふらと石神井公園に沿って住宅街を駅に向かった。
西武池袋線の石神井公園駅周辺の商店街は狭い路地にコマゴマと商店が並んでいる。
”サンボ”という行きつけの喫茶店に入った。
昼前なので店は空いていた。
入り口の本棚に置いてある”少年ジャンプ”を3冊掴んで、下の歩道を見下ろせる4人掛けの席を占領した。

ジャンプを読みながら、注文したカレーセットをコーヒーと一緒に食べた。
まだ眠い。いや、寝過ぎたせいで頭が少し痛い気もする。

食べ終わり喫茶店を出ると、駅前のパチンコ屋に向かった。
この頃、私はパチンコに凝っていた。
仕事やレッスンの帰りにチェロケースを店の入り口にくくりつけて、街中のパチンコ店でパチンコに興じることもよくあった。
パチンコ屋の騒音と充満する煙草の煙の中は不思議と居心地が良かった。
あの頃のパチンコ屋は今よりずっと出た気がする。
いや、出たときの記憶ばかりが残っているからそう思うのかもしれない・・。

2時間ほどしてパチンコ屋から出ると、少し耳鳴りがした。いつものことだからあまり気にならない。
この日はよく出た。両替所で現金を手にする。2万円ちょっとあった。

すっかり気分をよくしてまた自転車をフラフラこいでマンションに帰った。


留守電の明かりが点滅していた。
点滅はなにかメッセージが入っている合図だ。
私はいつものように「再生ボタン」を押した。

「21件です」

な!? なに??? 
私はだだならぬ異変を感じた。「21件だと?」 たった2〜3時間で???


「もしもし、荒木さんですか? ○○事務所の佐伯(仮名)ですけど、もう出られましたか?」 ピーー

一瞬で血の気が引いた。○○事務所はこの頃よく仕事を貰っていた音楽事務所で、音楽教室とか結婚式の弦楽四重奏なんかを、わりと専門にやっているところだ。
佐伯さんはそこの女性マネージャー。
私はあわあわしながら手帳を確認・・・。
そう。今日は23日の・・はず。
新聞はとってなかったのでTVを着ける。


そうしている間にも次のメッセージ
「もしも〜〜し、いませんか? 荒木さん。リハーサル始まってますけど」 ピーー

落ち着け。そう。落ち着くんだ!
手帳をよく見ろ。今日は何日だ? 一昨日○○響行ったんだから、えっと・・。
今日は24日だろ! 
げーーーー! 1日勘違いしてた!!!


私の狼狽とは全く無関係に留守電のメッセージは無情に続いた。
「もしもし、荒木さ〜ん。」ピーー
「荒木さん、もしこれ聞いたら本番は15時ですから。急いで来てください」ピー
「荒木さん? いない?(いないみたい)」ピー


時既に遅し。
今から出ても本番には到底間に合わない時間だった。
この頃は携帯はないので、佐伯さんにこちらから連絡をとる手段はない。
とにかく電話の前で正座して待つ。
やがて佐伯さんから電話があった。

「もしもし! 荒木です! 申し訳ありませんっ!!」

というわけで、佐伯さんに謝りまくり、その夜は小編成のオケ(チェロは私を含めて3人)の主立ったメンバーなどに謝罪の電話を入れまくった。
そのオケは、当時よくやっていたBGMっぽい弦カルのメンバーも沢山いて、馴染みの人たちだったので、「あはは、気をつけてね」とか、チェロのベテランのおじさんなんかは「そういうこともあるよ」なんて慰めてくれて涙が出そうになったが、あまりのショックでしばらく立ち直れなかった。


それからは、1日に30回くらい手帳を確認するようになった。
そして、電話恐怖症になった。
夜寝てても、突然電話のベルが鳴ったような気がして飛び起きたりしていた(笑)。

あの時はオケだったからまだ何とかなったかもしれないが、もし室内楽だったら・・。
考えるだに恐ろしい。
しばらくの間、そう1年くらいは、どこにいてもあの留守電を思い出すだけで、「ウキ〜〜〜〜ッ!」と叫びそうになった。実際就寝前に布団の中でいきなり思い出して「ウキ〜〜〜〜ッ!」と言いながら足をバタバタさせたりしていた。


後遺症はメンバーの優しい言葉に癒されて徐々に治まっていったが、つい最近久しぶりにあの留守電が夢に出てきた。
目覚めた後、懐かしかったがやはり恐ろしかった・・・・(苦笑)。
20年たっても教訓を与えつづけてくれている、今となっては貴重な体験であった・・・。

【おわり】

Posted by arakihitoshi at 01:13│Comments(4)││音楽 
この記事へのコメント
5
この記事すごくわかります。
遅刻が確定的になった時に、電車に飛び込もうかなと思ったり、
このまま誰も知らない所に逃げようかなとか・・・・・。

留守電の話もそうですけど、当時の石神井公園の情景もうまく表現出来ていて凄いなぁと思いました。確かにあの練馬の休日はヘリコプターの音が聞こえる感じがします。笑。

今、両親がそこに住んでいるので1年に1回だけ東京公演の時に帰りますけど、だいぶ駅前とか昔の風景は無くなりましたよ。

道路が拡張されて、高層マンションが沢山出来ましたから。
Posted by らびお at 2008年12月11日 02:39
5
>げーーーー! 1日勘違いしてた!!!
>「ウキ〜〜〜〜ッ!」

すごくわかります(´;ω;`)私もついこないだやっちゃいましたorz
プロの世界ってシビアですけど、優しい言葉をかけてくださる方々でよかったですね。
Posted by Philoh at 2008年12月11日 13:16
私にとって今でも見る悪夢?は大学を卒業できなかった夢です。実際は卒業できたんですが、4年で単位を3つ落とすとアウトだったのです。決まって試験が終わってしまって、もう間に合わないと気づくという内容なんですよね…。夢から起きてからホッとします(苦笑い)。
Posted by よこおじゅん at 2008年12月11日 22:08
みなさん書込みありが鼎瓦兇い泙(゚▽゚*)
>電車に飛び込もうかなと思ったり
がはは! うんうん。激しく同意です。
ボクは主に車なので、自分から電柱に激突して、「事故った」っていうことにしようかとか・・(笑

単位関係の夢は私もよく見ます。やはりみなさん見るんですね〜。
ちなみに大学の単位足りずに卒業できず・・、をリアルで体験してしまった私は、高校の単位が足りずに卒業できなかった夢を見ますが・・(笑
Posted by あらき at 2008年12月12日 00:30

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