*一部、映画「ディア・ドクター」のネタバレにあたる可能性があります。
数日前、市内の国道を車で走行中に面白い光景に出会った。
片側三車線の大きな国道だが、自動車メーカーが集まって存在する地帯がある。
その地帯で黄色い交通安全の旗を持った人がズラっと並んで立っている。
よく見ると、自動車メーカーの人たちがそれぞれ自分たちの店舗の前に並んでいるようだ。
Tヨタ、Nッサン、Hンダ、Sズキ、Mツダ、そしてLクサス。
すべてのディーラーが揃っていた。
地区の商店街の社会奉仕活動に狩り出された雰囲気に見えたが、面白かったのは彼らの並んで立っている様子。
それぞれの会社の社風というか、いやむしろ社格と言ってもいいくらいの違いと差を観察することができた。
一番イケてなかった会社は・・、書かないけど、この会社の車は買いたくないと思った。
管理職風のおじさんは照れ隠しなのか、「いや〜、トホホですな・・」みたいな感じで立ち話してるし、営業風の兄ちゃんも旗を挙げるでもなく中途半端に支えて、ダラダラよそ見してるし。「やってらんね〜」って声が聞えてきそうだった。
すごくかっこ悪かった。
際だって素晴らしかったのがLクサス。
あの高級志向は少し鼻につくが、さすがホテル仕込みの接客を売りにするだけのことはあると思った。
身なりも正しく、背筋も真っ直ぐ。工場の人たちもつなぎ服をビシッと着て、皆作り物っぽいけどプロっぽい笑顔で旗の高さも揃えて整列していた。
商店街から支給されたであろう安っぽい黄色い帽子まであつらえたかの様に立派に見えた。
すごくかっこよかったし、見ているこちらの規範意識まで高まった気がした。
さて、話しは変わるが、札響は激忙の7月。
台風の隙間のような連休があったので久しぶりに映画のはしごをした。(と言っても3本見ただけだけど)
今回は、西川美和脚本・監督、笑福亭鶴瓶主演の「ディア・ドクター」が面白かった。
最近話題の西川美和監督、1974年生れって言うから35歳くらい。
2週間前の「週刊現代」の巻頭グラビアに登場していたが、恐ろしく美人だ。
一体どこのどいつがこういう愛らしくて妖艶で知性的で性格良さそうで才能溢れる超美人を”落とす”んだろう?ってついつい考えてしまう・・。
きっと六本木ヒルズとかにオフィスを構えるIT企業の若い社長とかが落とすんだろうか・・。
そいつはやっぱりニューヨークに月に一度とか出張に行って、飛行機は当然ファーストクラスかビジネスクラスなんだろうか・・・。
そんで、西麻布の超高級マンションの最上階に住んでるんだろうか・・・。
車は900万円くらいするでっかいベンツで、休日は赤いフェラーリに乗るんだろうか・・・。
そんで、デートとかで「あ、いけない!。美和さんと話していると楽しくて、つい時間が経つのを忘れてしまいます・・」とか言いながらロレックスの腕時計をチラッと見たりするんだろうか・・。
あ〜〜〜、面白くね〜〜〜〜。
どーせ俺は、ETCの休日割引に当って車の中で「よっしゃ〜〜!」とか言いながらガッツポーズしてる超庶民だよ。
吉野屋の50円割引の日に当って「らっき〜〜!」とか言いながらみそ汁追加注文しちゃう貧乏人だよ。 文句あっか!
話しが外れた。
で、ディア・ドクターは本当に面白かった。
予告編から分かるように、鶴瓶が田舎のニセ医者で登場するのだが、ゲンナリするようなヒューマンドラマではなく、人の世の嘘とか、人間の弱さなんかが細やかに上手に描かれてて、この監督の前作「ゆれる」も見たけど、脚本もこなしているわけだから、やっぱり凄い人だと思う。
前作「ゆれる」も同様に、人の世の嘘とか人の弱さがテーマだと思った。
ホンモノの医者よりも医者らしい鶴瓶の悲しくも可笑しいニセ医者にはとっても感情移入できた。
そんなわけで、”嘘”については普段からいろいろと考えることが多い私は、この二作はかなりお気に入りの映画である。
医者じゃないのに「医者です」とか、
「全部嘘だったのね!」とか、
世の中にはついていい嘘と悪い嘘があるんだよ、とか、
嘘も方便とか、
罪な嘘、優しい嘘、悲しい嘘、愉快な嘘、
上手な嘘、下手な嘘、
すぐバレる嘘、
「墓場まで持っていく」っていう嘘、
いい奴を”演じる”とか、
「嘘でもいいからしっかり抱いて!」(by シンデレラハネムーン)とか、
嘘は私たちの人生を豊かにしてくれる(笑)。
みんなが今回の大河ドラマの直江某みたいな純粋真っ直ぐ君はつまらない。今回の大河は途中で見るのを辞めてしまった。
あんな正直者で本音だけで世の中渡っている戦国武将は"ヘン"だ。
本音と建前の使い分けが上手に出来るのが”オトナ”だと思う。これが出来ない人は年齢を重ねてても妙に子供っぽい。周囲からも大人扱いされない。
じゃあ、建前っていうのは嘘に含まれる訳?
まあ、広い意味での嘘だんだろうな。と思う。
そして、さっきの自動車ディーラーの話しに戻るのである。
イケてないと言った会社の人たちの態度は正直だけど子供。
Lクサスは嘘つきだけどオトナ。
私は断然オトナがいいね。
これでいいのだ。