2009年09月20日

「マエストロ、それはいかがかと・・・」

本当の題名は「マエストロ、それはムリですよ・・・」。
話題の本です。
指揮者の飯森範親さんが音楽監督になって山形交響楽団と改革に取り組んだお話しです。
先月飯森さんがいらした時に舞台上で宣伝していかれました。

最近の山響の動きには注目していました。
私もフリー時代山響さんにはエキストラで呼んでいただいて随分お世話になりました。
当時の山響を知っている身として、最近の山響は一口で言ってとても垢抜けたなー(失礼!)と感想を抱いておりました。
なのでこの本はとても楽しみに読ませていただきました。

内容的には飯森さんの功績がアピールされ綴られています。
”ファックスや携帯で送られてくる山のような『飯森マニフェスト』”
”1%でも可能性があれば「NO」と言わない”
”「音楽家はサービス業です」が持論”
などなど、飯森さん語録が散りばめられ、それが”飯森イズム”だと。
そして企業経営にも役立つだろうと。(この本、本屋の経営コーナーに並んでいるそうです)

なるほど・・。と膝を打つ反面、一方の山響は・・、
”当たり前のことも出来ていない”
”自信がないからできない”
”負のスパイラル”
と、ダメダメぶりをこれでもかというくらいアピール。

この本は飯森さんが書いたのではなく(飯森さんは監修)ライターの方が書いているので、飯森さんの功績を引き立てるために必要なロジックなのかもしれないし、よくある手法ではあります。NHKのプロジェクトX的な雛形ドキュメントっぽい感じがしないでもないです。
しかし山響の楽員さんは存じあげてる方何人もいますが、演奏家としても人間としても志の高い尊敬に価する人たちです。もちろんダメダメであろうはずもないです。
彼らはこの本を読んでどう感じたんでしょうか・・。
特に本の中でダメダメ役を一手に引き受けているS藤次長さんに感想をお聞きしてみたいものです。

この本を読んでいる間、かつての札響の経営破綻と再建のプロセスと重ねていたのですが、組織の改革というものは、はたしてたった一人の英雄の力で成しえるものなのでしょうか・・。
札響の時はむしろ誰か一人の功績が際だたないように注意しながらマスコミ対策をしていました(それが唯一正しいと言うつもりはないですが)。例えば尾高さんなんかも自分一人の功績の様に報じられるのを嫌っていましたし。
そもそもダメダメ組織の中にたった一人パラシュートでマエストロが降りてきて組織改革をすべて出来るんでしょうか。
やはり「それはムリ」ではないでしょうか。
そこには皆が改革を望んで実行する意識や行動力とか、期が熟すための歴史とか、周辺の理解とか協力とか、いろんな要素が不可欠なのではないでしょうか。

飯森さんの功績はもちろん否定しないですけど、改革へのエールにちょっと水を注された気がしないでもなかった一冊でした。
でも、オーケストラ(特に地方オケ)に興味のある方には是非読んでいただきたい必読書だとは思いました。




さて、まったく話しは違いますが、というか違いすぎますが、最近癒されているお気に入り動画を二つご紹介します。
ひとつは「いとくとら」と書いて「いくら」ちゃんの動画です。
最近流行っているニコニコ動画の”○○を踊ってみた”系ですが、ウマ可愛さではダントツでしょう(踊りとスタイルがクラシックバレエなのも良い。リアル初音ミクみたいなのところも良い。)。そしてこのセンス!。まさに二次元殺しです。何回見ても癒されます。他にもあるので「いとくとら」で検索してみて。
最近顔出ししたのできっと近々ブレイクすると踏んでいます。


そしてもうひとつがこれ。有名な動画なので知っている人も多いはず。
笑のツボに入っちゃったお天気オネエサン。
謝りながら笑が止らないのが理屈抜きで癒されます(笑)。



Posted by arakihitoshi at 23:58│Comments(4)TrackBack(0)

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この記事へのコメント
 あらき先生おっしゃる様に組織の変革は一人ではできません。ただ、もしかするとちょっとしたきっかけ(動機)にはなったかもしれませんね。現代の日本のオーケストラは、駄目駄目なメンバーなどいないと思います。むしろ、日本の音楽大学から排出されるメンバーのレベルが高いと思います。
Posted by よこおじゅん at 2009年09月22日 21:59
よこおさん>そうですね。確かに動機になったと思います。というかマエストロの功績はきっととても大きいんだと思います。TVの露出度もとても大きいですしね。

さん>お久しぶりです。そうですか〜〜。やはり色々な意見が・・(笑)。
でも待遇がぜんぜん変わってないどころか悪化してるならそれは問題ですね。本の中に「音楽家はお金や暮らしむきのこと言ったらいけない」みたいな”イズム”がありましたが、私の考え方は違います。
ウィーンやベルリンの楽員もステージを離れたらお金の事を言います。それは当然だと思います。(彼らは言っていいけど日本の楽員はダメなんだと言うならそれはもう仕方ないですが・・)
『いい演奏したらお金は後からついてくる』みたいな信仰というか思考停止っぽい考え方ではなく、音楽家も舞台をおりたらきっちり社会に参加して主張すべきはすることが大切だと思います。

というわけで、頑張ってください(^_^;)
Posted by あらき at 2009年09月23日 09:09
最近日本のオーケストラのCDを買うことが多いのですが、どのオーケストラを聴いても非常にレベルが高いと思います。特に日本の音楽大学のレベルというか日本の音楽家のレベルが高いので、日本のオーケストラのレベルに差がなくなってきたのではないかと思います。そうなると逆にどう個性を発揮していくかが問われるかもしれません。札響の課題は大編成の曲でしょうか。在京のオーケストラの様に100人前後の団員で運営できると、特に管楽器でソロ奏者が2名揃ってくると競争もあってよりレベルアップになる気がします(スイマセン生意気なこと申し上げ…)。
Posted by よこお じゅん at 2009年09月23日 23:01
私もこの本を読ませていただきましたが、別に飯森さんばかり持ち上げて、山形交響楽団がだめな集団なんて全く感じませんでした。

長年同じ水を飲んできた人に新しいことをやってもらうのはとても大変なこととですし、大きな改革は一人の先導者だけで成り立つなんて、普通誰も思わないと思います。

むしろ、隣の芝生をやっかむようなコメントがとても悲しいです。

批判的なコメントを載せるくらいなら、アマゾンのバナーは外したほうがいいのではないでしょうか?



Posted by あきんこ at 2009年10月23日 01:15

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